2019年12月12日木曜日

AOTY 2019

4年もの間、放置していた当ブログ。
今年こそはと思い久々に年間ベストのブログを書かせていただきます。
トップ10のアルバムを選定して発表しますね。
それではいきましょう!




10.Pickle Darling - Bigness(Z Tapes)(1/4)

ニュージーランドはクライストチャーチのLukas Mayoさんによるインターネット経由な宅録ベッドルームポップのソロプロジェクト。今回の2ndアルバムもスロヴァキアのZ Tapesからリリース。まず言えるのはアルバムの1曲目Bicycle Weatherがめちゃくちゃ名曲だということ。冒頭のイントロからいきなりのクライマックス感。ゆったりとした打ち込みのビート・リズムに乗せて曲は進んでいきます。秘密にしておきたいことをこっそり打ち明けてくれるようなそんな無邪気な曲の歌詞にも心打たれます。全体を通してもイノセントな幼少期を省みるようなセンチメンタルさとノスタルジックな趣きを感じられて好きなタイプです。あとは楽器のチョイスなり音色なり泣きのメロディがすごくそれらを助長させています。個人的にはHoward HelloやMisophoneなどのグッドポップスなバンドたちを思い出しました。このアルバムは今年の1月も早々に聴いてこれはとてもいいアルバムだから確実に年間ベストに入れようとその場で決心したようなそんな好盤になりました。10位。


9.Cherry Glazerr - Stuffed & Ready(Secretly Canadian)(2/1)

カリフォルニア州はLAの3ピースバンド。2019年にアルバムをリリースしたSASAMIさんが在籍していたバンドでもありますね。そこを起点に初めて聴いた訳です。やるせなさをギターでかき鳴らして発するようなノイジーなサウンドで脳天に雷を打たれました。そんなノイジーなギターサウンドにも埋もれない歌の力があります。メロディはしっかりしていてポップでキャッチーという見事な出来です。90sのグランジさらに言うとNirvanaのアップデート型なんですけどそれだけでは終わらなくしっかりとしたサウンドメイクやアルバムを通しての作り込みがしっかりしているため音源としてとても優れていますね。今年も女性voのオルタナティブなインディーのバンドが多くビッグネームのJay Somや似たようなオルタナ・グランジなShady Bugというバンドも好みだったのですがその中でもCherry Glazerrのこのアルバムはその完成度とキャッチーさが個人的に頭ひとつ飛び抜けていました。過去作も聴かねば。9位。


8.Omni - Networker(Sub Pop)(11/1)

ジョージア州はアトランタの3ピースバンド。2ndまでのTrouble In MindからSub Popへレーベルを移籍してからの3rdアルバムになります。Omniは1stの頃からずっと追っているバンド。最近ではそのサウンドのフォロワーも見受けられますが1stから一貫してトリッキーなロックサウンドという特徴があります。ポストパンクマナーの鋭角なギター、ベースはウネリながら踊り、ドラムは個性を消しつつもドタバタしたり性急感を演出したりとひと癖あるサウンドになってます。楽器のアンサンブルのなかにも隙間が存在していてそれが緊張感にもその反対の方向性の脱力感そしてさらには軽やかさにも繋がっています。今回の3rdアルバムのNetworkerではそのサウンドにも更なる磨きがかかっています。2曲目のCourtesy CallではTelevisionのMarquee Moonのリフをほぼそのまま拝借したようなフレーズが出てきたりと思わずニヤリとしてしまう仕掛けにもグッときました。全体的には言ってしまえば変てこポストパンクなポップサウンドであります。ずっとファンです。8位。


7.Horse Jumper of Love - So Divine(Run For Cover)(6/28)

マサチューセッツ州はボストンのグランジ・スロウコアな3ピースバンドによる2ndアルバム。2017年の1stのHorse Jumper of Loveというセルフタイトルアルバムが後追いながらかなりググっときたため今回の2ndアルバムSo Divineにもかなり期待を寄せていました。完全なる静寂や宇宙にまで届いてしまうんじゃないかというくらいの静と動の対比があるグランジマナーのギターワークとそれを支えるダウンテンポなリズム隊にささやいたり咆哮したりする優しくも激しい歌声。現実の世界で今ここにいながら目には見えない規模の大きい物体を追い求める渇望や祈りなどが色濃く出ていることが見受けられます。スロウコア的なゆったりさにノイジーでだらっとしたギターが乗るそのサウンドはズルズルとだらしのない感じにも聞き取れるんですが歌詞を眺めつつ通して聴くとその高さや深みのある曲達にハマって引き込まれました。ちなみに1stからこのバンドのアルバムをリリースしているRun For Coverは今トップクラスで輝いている最高の音楽レーベルですね!推しです。7位。


6.Hikes - Mahal Kita(Community)(11/22)

テキサス州はオースティンの4人組エモ・マスロックバンドの2ndアルバム。Hikesはtoeの美濃さんが録音を担当したLilt EPで知りました。その中のOnsetという曲が奇数拍子でドタバタしながらバーストするスケールの大きい物凄くカッコいい曲なので機会あったら是非聴いてみてください。今回のこの2ndアルバムも全体を通してかなりいいですね。繊細ながら高らかなこの感じ。演奏テクニックも相当高く唄心もあるのでポストTTNGという声もあったりします。ただ大きく言いたいのはそれだけではなく切迫した自己表現という点においてめちゃくちゃ刺さるものがあるということです。やはり肝になるのはフロントのNay Wilkinsの存在ですね。今回のMahal KitaというアルバムタイトルはNayの祖国フィリピンの言語タガログ語でI Love Youという意味らしいです。自身のトラウマや喪失感などに起因した渇望するような希望のI Love You。マイノリティ寄りの存在から発せられるこの愛のある強いメッセージそしてその意思には強く敬意を表します。素晴らしいバンド!6位。


5.Mac DeMarco - Here Comes The Cowboy(Mac’s Record Label)(5/10)

カナダ出身のSSWの新譜。4枚目が公式なようだけどもっとたくさん出ている気がする。今作は自身のレーベルからのアルバムリリース。思えば大分作風も変わってきてまして個人的にはSalad Daysと2が過去作では好きです。この新譜のことをお話ししますね。聴いてて思ったのは平坦な日常をさらに焼き増ししてフィーチャーしたような音楽集だなということ。ただアルバムを通して変化してない訳ではなくChoo Chooのようなアッパー寄りな曲もあったりHeart To Heartのような夜っぽい曲もあったり1日の中での時間の移ろいのような感覚を受けます。そして全体を通すほの寂しい感じは枯れやわびさび、そして終わりや無を表現している気がします。私たちの昨日はもうすべて過ぎ去っていきまた新しい日が始まりを迎えるだろうそして今日という日はバイバイするけどまだ今日でいさせてくれよパーティーは実はまだ終わってないんだぜ。という感じもします。特にアルバムの一番最後とかの驚きの展開とか。いやしかしでもこの音楽はとても優しく聴き手に寄り添ってくれること請け合いですよ。決してうるさくはないし音数の少なさやフォーキーな趣きも全体を通してリラックスして聴けていいですね。5位。



4.Julia Shapiro - Perfect Version(Hardly Art)(6/14)

ワシントン州はシアトルのバンドChastity BeltのフロントウーマンJulia Shapiroのソロ1stアルバム。Chastity Beltのバンドとしての新譜も今年リリースされてそちらもすごくよかったのですが自分はこちらのソロアルバムを推したいです。暗く閉ざされた自分自身の殻から上を少し見上げると微かに見える光が差してくる。その明るく輝く光を追い求めるように希望を持つ。そしてゆらゆらとした青白い炎をゆっくり少しずつジリジリと燃やしているようなそんな印象を受けます。サウンド的には(Sandy) Alex GやElliott Smithのような内省フォークポップのスタンスでGalaxy 500のようなバンドサウンドをほぼ一人で作り上げてしまったという感じ。随所にあるレイヤーがかったギターノイズも曲のよさを邪魔せずそれを活かす方向性に持っていってますね。こういう内省的なアルバムはずっと聴けるよさがあります。陶酔できる美しい世界観がとても身に染みました。4位。



3.Crumb - Jinx(Crumb)(6/14)

NYはブルックリンの4人組Indieバンドの1stフルアルバム。2枚のEPの評判がよく自分もそれらを聴いてはいました。でもイマイチそのよさがわからなかったのですがこの1stを初めて聴いたときはガツンとやられました。まとわりつくような憂鬱をセンチメンタルやノスタルジックな方向性に昇華させる訳でもなく憂鬱のまま進む曲群。かと言って暗く閉ざされたままでもなく若干開き気味の扉。そこから夢見心地な夜の世界へと誘うような趣き。この独自なサウンドの耳触りは聴いていくうちにサイケデリックに作用して結果的には幽玄の世界へとトリップさせてしまうという恐ろしいグルーヴのループを生み出しています。各楽器陣のスキルの高さは出自がガレージなバンド界隈ではないだろうなということが伺えます。そして自分たちの出したいサウンドをしっかりそしてはっきり打ち出してるという強みも感じとれます。ジャジーでメロウそしてスムージーで滑らかだったりするある種のお洒落さもありますね。voのLilaさんの歌声は気だるく憂鬱でこのサウンドにとても合っています。とにかく唯一無二でオリジナリティの塊のような素晴らしいこのアルバムでした。3位。


2.Aldous Harding - Designer(4AD)(4/26)

ニュージーランドの女性シンガーソングライターによる3rdアルバム。前作が各メディアで絶賛されたようですが僕は今作から入りました。これは見事な内省フォークポップ。子供の頃の童心にかえりたいけど痛みを抱えつつも現状を受けいれて前に進んでいこうとする。そんなセンチメンタルでノスタルジックそして冷たいなかにも温かみの微かに感じられる空気や気配を曲で表現しているような気がします。そして自身の母親もシンガーだと言うそのボーカリゼーションの豊かさ。特にZoo Eyesのオクターブ違いで高低を使い分けたりする圧倒的な表現力には舌を巻きます。そして歌やメロディにしなやかな力がすごく感じられて素晴らしいです。そして最も言いたいのはThe Barrelという曲が自分のなかで今年イチの名曲だったということ。多くは言いませんがイントロのピアノの音色から始まりそこから目の前の全ての風景を変えてしまうような素晴らしい魔法のような曲です。是非聴いてみてください。2位。


1.(Sandy) Alex G - House of Sugar(Domino)(9/13)

ペンシルバニア州はフィラデルフィアのカルトポップスターの通算9枚目(?)のニューアルバム。いやぁ傑作ですね。このアルバムに対しては音楽的な話を一切しないです。まず逃避のために音楽があるとします。このアルバムはまさしくそのためにあるものだと確信しました。このアルバムを聴いてるとここではないどこか遠くへ連れてってくれる気がする。だけど最終的には自分のホームそして自分自身に帰還するというまるで壮大な次元における自分探しの旅のような雰囲気を得ました。感覚的には軽やかに高いところへとピョーンと飛び跳ねてみたり逆に低いところをドロドロとうごめいたり右往左往してみたりグルグルとループしてみたりジグザグとしてみたりと言った感じに。またことばで説明しようとすると、新しくもあり懐かしくもある。遠くもあり近くもある。冷たいし温かい。楽しいし悲しい。スケールも大きかったり細かく繊細だったり。こんな感じに二元的にどんな抽象表現でこの音源の聴いたときの感情なり思いなりを言語化しようとしても的を得ないしどこかへこぼれ落ちてしまう。でもそれらを全て内包している。ことばでは言い表せきれないような感情や感覚を(Sandy) Alex Gは音楽で不思議にも見事に表現していて本当に稀代の素晴らしいアーティストだなと思います。House of Sugarではこの壮大な旅の先には何てことのない自分を省みていた。ただそれだけだった。という結果的な何気なさが。グサリと刺さったというはなしでした。変なはなしですが。音楽を聴いて新譜を探して聴いているのはこういう傑作に出会うためのようなもので本当に素晴らしいアルバムだなと思いました。1位。今年のベストアルバムです。


以上、年間ベストでした。

基本的に内省的でセンチメンタルでノスタルジックな音楽が好きなので今年のアルバムの選定はそれに見事に当てはまりました。
そしてこのベスト10以外にも2019年は素晴らしいアルバムが多かったですね。
今年は定期的に新譜を確認していましたし他の方面もちらっとは聴きましたがまあやはり今回のベストは例年と同じようにバンドものが主体となりましたね。

そして
10年代も今年で終わりというわけですね。
気が向いたら10年代ベストのブログも書きたいところではあります。
気が向いたら...。

来年からは2020年でまた新たな10年間も始まります。
当ブログも機会みつけてアルバム紹介とかもまたやりたいです。

それではご覧いただいている皆さまよいお年をお過ごしください。

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